小中学生向けの経済講座 第154回
今回のテーマ:農産物の価格
次の4人が登場人物です。
Aさん:一般の農家で、さまざまな種類の野菜を育てている。農業の技術はふつうで、味も標準レベル。
Bさん:トマト専門農家で、技術は日本一レベル。商品名「レッド・ジュエリー(赤い宝石)」は有名ブランドとなり、高級化に成功している。
Cさん:野菜が大好きで、毎日朝昼晩とたくさんの野菜を食べる。もちろんトマトは好物。
Dさん:子どもの頃から野菜嫌いで、トマトもほとんど食べない。
ある年のこと、トマトが豊作で、市場には大量のトマトが運び込まれ、山積みになっています。ただし、AさんとBさんのトマトの生産量は例年通りで、増えても減ってもいません。また、味も例年通りでした。
この状況で、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんは得するでしょうか、損するでしょうか、あるいは得も損もしないでしょうか。
これに対して、メンバーから多くの意見が発表されました。
<標準的な解答>
・豊作でトマトの価格が安くなるので、Aさんはその分収入が減り、損をする。
・Bさんのトマトはブランド化しているので、市場からの影響を受けることなく、損も得もなし。
・好きなトマトを安く買えるCさんは得をする。
・野菜を食べないDさんには関係ない話なので、得も損もなし。
<ユニークな解答>
・Aさんはトマトが豊作になることを察知し、他の野菜に切り替えたので、損をせずに済んだ。
・物価高が進む中、高級品であるBさんのトマトから普通のトマトに切り替える人たちが増え、Bさんは損をした。
・価格が大幅に下がって、多くの人がトマトを食べるようになり、そこからBさんのトマトに注目する人たちが増え、人気が上がり、Bさんは得をした。
・Dさんは大好きなチキンのトマト煮が安く味わえるようになり、得をした(固形のトマトは嫌いだが、トマトソースは好き)。
標準的な解答では、「供給の増加が市場価格を押し下げる」ことがポイントでした。農産物の場合、「たくさん作ったがゆえに損をする」事態が起こり得ます。生産調整が難しいため、極端なケースではせっかく作った農産物を破棄することもあります(そうしないと赤字になってしまう)。
一方で「差別化」を実現したBさんのトマトは市場価格の影響を受けにくく、「ハイブランドは高級品のまま」ということになります。同じトマトでも、両者は市場経済において別の種類の商品ということです。
驚かされたのはユニークな解答がいくつも提示されたことでした。想像力を発揮して、標準的でないシナリオを考えてくれました。さすが、子どもは思考が柔軟で楽しい!