『ナショナル・ジオグラフィック』2020年2~5月号<2>
前回ブログの続きです。
4月号の「守られてきた地球」、「傷つけられた地球」の内容について、特に印象に残ったことを記します。
それは、この記事が、ここ数十年で地球上において改善している点を列挙していることです。全部で6項目挙げられています。
第1は食料が増えたことです。窒素肥料の利用、灌漑の整備、高収量品種の登場によって、世界全体の食料生産量は人口増加を上回る勢いで増えています。
マルサスの『人口論』以来、約200年に渡り食料不足に対する懸念が主張され続けてきましたが、その見通しは外れ続けました。
第2は長生きになったことです。下水道の整備、栄養や健康状態の改善により、世界全体の平均寿命は1960年の53.6歳からほぼコンスタントに上昇し、2017年には72.4歳となっています。
全体平均で約20歳の上昇は、大変大きな成果です。
第3は妊産婦の死が減ったことです。医療の充実や衛生状態の改善などで、出生数10万人当たりの妊産婦死亡率は、1990年の340人から2015年に169人まで低下しています。
25年で妊産婦の死亡率を半減させたということで、これも極めて大きな成果です。
第4は学校で勉強する時間が長くなったことです。教育の普及が多くの地域で進み、男女差も大きく縮小しています。学校教育を受ける平均年数は、1950年の4.7年から2019年の9.3年まで上昇しました。
第5はきれいな水が入手しやすくなったことです。上水道、共同水栓、井戸への投資が増え、一方で、下水道の整備で排せつ物による水質汚染も改善されてきました。
改善水源の水を使える割合は、1990年の80.6%から2015年の89.8%まで上昇しました。
第6は電気を使える人の割合が増えたことです。都市人口が増えたことが大きな要因です。また、太陽光発電など、送電線網を使わない発電技術が、農村地域の電化に役立っています。
その結果、電気を使える人口の割合は、1993年の76.7%から2017年の88.9%まで上昇しました。
このナショナル・ジオグラフィックの記事は、社会のよい点をデータを交えて、しっかりと説明している点で、価値が高いと考えます。
人類の歴史において、そして今日において、ジャーナリズムは問題点を指摘し、人々の不安を煽ることに偏っていると感じます。この記事のように、結果が出たことに対して、客観的に事実を考察し、“学者”や“有識者”、“専門家”が主張したことが間違っていたならば、間違っていたとはっきり伝えるべきですし、誤った見通しを報道した媒体は、自らそのことを報じるべきだと思います。
ナショジオのバランスのとれた報道に強く共感を覚えました。