小中学生向けの経済講座 第102回

9月26日(月)、小中学生向けの経済講座(第102)を開催しました。

 

新車より高価な中古車
Sさんから「ニュースで、新車よりも中古車の方が高いという報道を見たが、どういうことか?」という質問がありました。

 

私からコメントする前に、「どんなケースが考えられるか」と尋ねてみると、I君からほぼ正解に近い回答ができてきました。すごい!

 

現在、半導体などの原材料不足で部品調達が計画通りいかず、生産停止になっている車種が各社にあるようです。それが人気車種ですと、生産再開まで待っていられない消費者が中古車市場で買い求めるという行動に出て、それが活発になりますと、新車価格を上回るという事態も起こり得ます。中古車市場はマーケット原理がよく機能する、ということも合わせて説明しました。

 

 

欧米諸国の利上げ
欧米諸国の金融引締め策が話題になっています。I君が以下の難しい記事を提出してくれました。

 

 

物価上昇を示す指標が続けて出てきたため、FRBなどの中央銀行がインフレを抑える目的で金融引締策を行っています。金利が上昇すれば、その分経済活動が抑制されるとのロジックで、株価は下がります。さらに、その引締め策が市場の予想よりも急ピッチで進められれば、一層の株価押し下げ効果を発揮します。

 

一方で、日本銀行は当面、金融引締めに転じることはないと明言しているため、これが外国為替市場における円安を生み出しています。

 

 

価格維持 近づく限界
下は日本のインフレ動向に関する記事で、消費者ではなく、生産者側の視点から記述されています。

 

 

この記事を読んで、印象に残った点を発表してもらいました。「値上げをしたら売上げが大きく減ったので、価格を戻したが売り上げが戻るまでにかなり時間がかかった」など、原材料や仕入れ価格の上昇を商品価格になかなか転嫁できない状況が描かれています。現場の厳しさがよく伝わる内容です。規模の小さい会社・お店は、体力が持たなければ倒産・閉店に追い込まれます。

 

 

最低賃金 中小に重荷 東京と地方の格差
先日公表された各都道府県の最低賃金について、東京と中部地方に格差があることを問題視する記事を見つけたので、紹介しました。

 

 

一通り読んでもらった上でディスカッションを行いました。①最低賃金が高いことは働く側にとってはありがたいが、雇う側には負担になり、特に中小企業の場合は経営圧迫になりかねない、②東京と地方で最低賃金の差がほとんどなかったら、その方がむしろ不自然であるといった、経済学を正しく理解した発言が非常に印象的でした、great!

 

最低賃金に差があることを「格差」と呼び、好ましくないというニュアンスで書かれていますが、この考え方は不適切です。東京と地方では人口や経済規模など、多くの条件が異なっていて、それゆえに様々な差が出るのは自然なことで、もし最低賃金がほぼ同一であれば、これは経済原理に逆らって中央統制の社会主義経済体制を敷いた場合になります。

 

なお、記事内のグラフで、英国、フランス、ドイツの最低賃金が1400~1500円であることが分かり、一同びっくりでした。

 

 

今回でI君は経済講座を「卒業」することになりました。高校受験の準備がその理由ですが、現在中学3年生で、逆によくここまで続けてくれたというのが実感です。「卒業」にあたり、I君から大変嬉しいメッセージもいただきました。高校生になったら、是非また復帰してください!

 

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